【過失割合】傘差し運転の自転車とクルマの事故

2023年5月時点の内容です。

傘差し運転の自転車とクルマの事故

雨が降ると、傘を差しながら自転車を運転する方をしばしば見かけます。道路交通法上、自転車は軽車両と位置づけられており、傘差し運転は視野が悪くなる、片手での運転になるため安定性が悪くなるなどの理由から、道路交通法や公安委員会規制等によって禁止されている場合があることをご存じですか?
実際に違反をすると、法律上の罰則が定められています。(*1)
また、それだけではありません。自転車の傘差し運転中に交通事故に遭ってしまった場合、相手がたとえクルマであっても、傘を差しながら運転していたことによって、自転車側の過失が大きくなる可能性があります。

傘差し運転の自転車とクルマとの事故の過失割合について、事故例を挙げて解説します。

【ご注意!】

ここで紹介した過失割合は、あくまでも一般的な基本の割合です。事故や事故当時の状況によって過失割合は異なります。あくまでもご参考とお考えください。

【事例1】信号機のない交差点における、傘差し運転の自転車とクルマとの事故

雨の日、信号機のない同程度の道幅の交差点にて、交差点を右折した傘差し運転の自転車と、交差点を直進したクルマが衝突してしまいました。

信号機のない交差点における、傘差し運転の自転車とクルマとの事故

【過失割合】

A(傘差し運転の自転車):B(クルマ)=35:65

【解説】

信号機のない同程度の道幅の交差点における、交差点を右折した自転車と直進したクルマとの事故の場合、一般的な過失割合はA(自転車): B(クルマ)=30:70となります。
今回のケースの場合は、自転車側の「傘を差すなどしてされた片手運転」が自転車の著しい過失と判断されるため、5%の過失が上乗せされる、という考え方になります。

【事例2】横断歩道を赤信号で渡った自転車と黄色信号で直進しようとしたクルマとの事故

雨の日、横断歩道の歩行者用信号機等が赤信号のときに横断した傘差し運転の自転車と、黄色信号で直進したクルマが衝突してしまいました。

横断歩道を赤信号で渡った自転車と黄色信号で直進しようとしたクルマとの事故

【過失割合】

A(傘差し運転の自転車):B(クルマ)=60:40

【解説】

歩行者用信号機等が赤信号で横断開始をした自転車と黄色信号で直進したクルマとの事故の場合、一般的な過失割合はA(自転車): B(クルマ)=55:45となります。
今回のケースの場合は、1つめのケース同様、自転車側の「傘を差すなどしてされた片手運転」が自転車の著しい過失と判断されるため、5%の過失が上乗せされる、という考え方になります。


自転車の傘差し運転は道路交通法で禁止されているだけでなく、万が一交通事故が発生した場合、過失割合に影響が出てくる可能性があることをお分かりいただけたかと思います。
2015年6月1日に道路交通法の一部を改正する法令が施行され、安全運転義務違反などの違反行為や危険行為を繰返した場合は、自転車運転者講習の受講が義務づけられるようになりました。
傘差し運転は、その違反行為の1つである安全運転義務違反に該当する可能性があります。そのため、自転車を運転される方は、雨が降ってきても両手で運転できるようにレインコートを用意しておくといった安全意識を持つことが必要になりそうです。自転車は私たちの生活に欠かせない便利な道具です。ただ、自転車も軽車両であり、扱いによっては危険な道具になる可能性があることを十分認識したうえで使用することが大切です。

(*1)各都道府県により扱いが異なる場合がありますが、ほとんどの都道府県において、自転車の傘差し運転は道路交通規則で禁止されています。各都道府県警のウェブサイトなどでも情報が提供されていることも多いようです。