車中泊の魅力&注意点とマナー

2023年5月時点の内容です。

ホテルや旅館などに宿泊せずに、自家用車の車中で寝泊まりしながら旅行する「車中泊」が、数年前から静かなブームとなっています。

自由でお手軽なイメージの車中泊ですが、快適かつ安全に旅を楽しむためにはいくつかの知っておくべきポイントもあります。車中泊の魅力と注意点について紹介します。

車中泊の魅力とは

宿泊施設を利用せずにクルマで旅をするスタイルには、キャンプ場でのキャンプやキャンピングカーでのオートキャンプなどがありますが、車中泊はそれらをもっと手軽にしたものといえます。一般的に車中泊は、キャンピングカーなどの専用のクルマではなくミニバンや車内の広い自家用車を使って、公共の駐車場などで宿泊するものを指します。

過去の車中泊のイメージといえば、早朝のスキー場の駐車場での仮眠、長距離運転時の仮眠、などといったものでしたが、近年はむしろ積極的に車中泊でのドライブ旅行を楽しむ人が増えています。こうした背景には道の駅や高速道路のサービスエリア、パーキングエリア施設の整備と充実、ミニバンタイプのクルマの増加、コンビニエンスストアの増加などが要因として挙げられます。また、高速道路の通行料の値下げや無料化で、できるだけ安く旅行をしたいという人も増えたとみられています。

宿の手配やチェックインの時間などを気にせずにすむ車中泊は、思いたったら自由に出発・移動できるのが魅力です。また、宿泊費を節約できる、観光地のすぐ近くで泊まれる、ペットといっしょの旅もOK……など、さまざまなメリットがあります。しかし、そうしたメリットと同時に車中泊ならではのデメリットもあるのです。

愛犬と一緒に車中泊

※愛犬と一緒に車中泊での旅を楽しむ人もいます。

車中泊の注意点とマナー

設備の整ったホテルや旅館ではなくクルマの中で睡眠をとるのですから、当然車中泊は快適なことばかりではありません。また、最低限のマナーとルールを守るモラルがなければ、楽しめないばかりか、思いがけないトラブルに巻込まれてしまうなど、せっかくの旅行もだいなしになってしまいます。そこで、車中泊をするときの基本的な注意点と便利な携行アイテムなどをまとめてみましたので、確認しておきましょう。

トイレと飲料水の確保できる場所を選ぶ

いつでも自由に移動できるのが車中泊のメリットですが、睡眠のために駐車する際はある程度の時間、同じ場所に留まることになります。そこで、重要なのがトイレと飲料水の確保です。24時間利用可能なトイレ、自由に利用できる水道設備(または自動販売機など)があるかどうかは最も重要なポイントです。

◎持っていると便利なアイテム:ティッシュペーパー、トイレットペーパー、懐中電灯、携帯トイレ、非常用飲料水

防犯上危険な場所は避ける

日中は賑やかな観光地でも夜になると暗く静まりかえってしまいます。そういった場所では、車上荒らしなどのターゲットとされる危険性もあります。防犯上、周囲に誰もいないといった場所はできるだけ避けたほうが安全です。なお、ドアは必ずロックし、窓は大きく開けないようにしましょう。できれば事前にカーナビなどで近くの交番・警察署の位置を確認しておくと安心です。もちろん、私有地や駐停車禁止のスペース、崖のそばや河川敷など災害の危険があるところは厳禁です。

◎持っていると便利なアイテム:窓の目張り用カーテン、シェード

駐車する位置も考えて

クルマを停める場所を考えましょう。便利だからといってトイレや自動販売機のすぐ近くを選ぶと、ほかのクルマや人通りの騒音で眠れないことがあります。また、トラックなど大型車の駐車スペースや入口・出口の近くは、夜間に出入りするクルマの騒音に悩まされたり、追突されたりする危険性があります。傾斜している場所も避けたほうがいいでしょう。

◎持っていると便利なアイテム:耳栓

長時間のアイドリングは厳禁

アイドリングしたまま車中泊をすることはマナー違反です。さらに、アイドリングしたままの車内睡眠は、排気ガスの侵入による一酸化炭素中毒の要因になったり、予想外のガソリン切れを引起こしたりする可能性もあります。車中泊のベテランには、充電可能なポータブルバッテリーとDC/ACコンバータ(AC電源の家電機器を使用するための電力変換装置)を用意している人も多いようです。

◎持っていると便利なアイテム:ポータブルバッテリー&DC/ACコンバータ、携帯ワンセグTV、ノートパソコン

車外で炊事したり騒いだりしない

できるだけ快適に、そして安全に休憩・仮眠できるスペースとして人気の高い場所が高速道路のサービスエリアや道の駅です。しかし、最近では一部のマナーの悪い利用者のために、利用に制限を設けた所もあるようです。公共の駐車場はあくまでドライバーの休憩・仮眠のための施設であり、キャンプ場のようにタープ(日除け)やテーブルを出しての炊事・飲食や、大騒ぎは絶対にしてはいけない行為です。食事は外食かあらかじめ用意しておいた簡単なものですませ、早めに就寝するように心がけましょう。また、ゴミはできる限り持ち帰るのが車中泊における基本マナーです。

◎持っていると便利なアイテム:非常用飲食物(食事がとれなかった場合を想定して)、保温・保冷バッグ、ゴミ袋

エコノミークラス症候群に注意

車中泊で注意したいことのひとつに「エコノミークラス症候群(同じ体勢をとり続けることで、血液が凝固して肺に詰まってしまう血栓症)」があります。大きな震災後に、被災者が自家用車で寝泊まりをしていてこの症状を発症したというケースがあります。運転座席をリクライニングしただけの簡易的なスペースで、長時間の睡眠をとることは避けましょう。車中泊では可能な限りフラットな広いスペースを作り、布団や寝袋などの就寝具を用意してください。また、エコノミークラス症候群は長時間の運転でも発症し得るため、こまめに休憩して十分な水分補給とストレッチを行いましょう。

◎持っていると便利なアイテム:布団・寝袋、車内の段差を解消するマット、就寝用着替え、携帯常備薬


最近では温泉施設やコインランドリー、24時間営業のコンビニエンスストアなどが併設されている休憩施設も増えてきました。また、無料の無線LANスポットやスマートフォンなどを利用して、インターネットでいろいろな情報を入手しながら旅行することもできる時代になりました。ただし、車中泊では公共の駐車場や休憩所を利用させてもらっているという感謝の気持ちと、周囲のドライバー・旅行者への配慮を決して忘れないようにしたいものです。