【過失割合】追越し禁止の道路で追越しをした車との衝突事故

2023年5月時点の内容です。

追越し禁止の道路で追越しをした車との衝突事故

片側1車線の道路を走行中、後続車に猛スピードで追抜かれた―。このような経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。

追越し禁止の道路で、無理な追越しをしてきた後続車との事故を例に、過失割合について解説します。

【ご注意!】

ここで紹介した過失割合は、あくまでも一般的な基本の割合です。事故や事故当時の状況によって過失割合は異なります。あくまでもご参考とお考えください。

【事例】追越し禁止の道路における、追越しをした後続車と追越された車との接触事故

追越し禁止の片側1車線の道路で、センターラインを越えて追越しをした後続車と、追越された車が衝突してしまいました。(いずれの車も同一方向に進行していたものとします。)

追越し禁止の道路における、追越しをした後続車と追越された車との接触事故

【過失割合】

A(追越された車):B(追越した車)=10:90

【解説】

前を走る車を追越すときは、前の車の速度や進路等に応じて、できる限り安全な速度と方法で前を走る車の前方に進入しなければならないと決まっています。(道路交通法第28条)
そのため、この事例のように同一方向に走る車を追越して前方に強引に割込むことは、その走行方法自体に無理があると言えるでしょう。
そのため、A(追越された車)とB(追越した車)が接触した場合は、原則としてB(追越した車)の過失が大きいとされます。
また、B(追越した車)にA(追越された車)が追突する形になったとしても、BはAがそのまま同じ速度で走行するということを想定して追越さないといけないので、追突がAの前方への割込み直後に発生した場合は、原則としてこの過失割合が適用されます。

スピードを落とさないと事故が起きるかも・・・

しかし、追越される車側にも、一定の決まりごとがあります。
追越される車は、追越しをする車が自車を追越すまで加速してはならないとされているほか、道路中央との間に追越せるほどのスペースがないときは、できる限り道路の左端に寄って進路を譲らなければならないとされています。(道路交通法第27条1項、2項)

また、追越してくる車の存在を認識しており、かつ、対向車も来ているとわかっているときにも注意が必要です。自車がそのままの速度と方法で走行すれば追越してくる車と対向車が衝突してしまうことを認識できる場合には、安全運転義務の一環として、速度を落とすなどして追越しをさせる注意義務があるとされています。これらの注意義務を違反したことが認められる場合には、A(追越された車)側の過失割合が10〜20%加算される可能性があります。

※追越し禁止でない道路での本事例の事故の場合は、基本の過失割合がA(追越された車):B(追越した車)=20:80となります。

追越しが禁止されている場所と状況

教習所で習った項目になりますが、追越しが禁止されている場所について、今一度おさらいしておきましょう。

  • 標識により追越しが禁止されている場所
  • 道路の曲がり角付近
  • 上り坂の頂上付近やこう配の急な下り坂
  • トンネル(車両通行帯がある場合を除く)
  • 交差点とその手前から30m以内の場所(優先道路を通行している場合を除く)
  • 踏切、横断歩道、自転車横断帯とその手前から30m以内の場所

「追越し禁止」の標識と「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」の標識

以下2つの標識は似ています。禁止されている内容が異なりますので、違いを覚えておきましょう。

「追越し禁止」の標識

中央線からはみ出す、はみ出さないは関係なく、追越し行為自体が禁止されています。

「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」の標識

中央線をはみ出しての追越しは禁止されていますが、中央線からはみ出さなければ追越すことができます。

「追越し禁止」の標識 「追越しのための右側部分はみ出し通行禁止」の標識

事故を未然に防ぐためには“無理な追越しをしない”というのが大前提ですが、もし追越し可能な道路で追越しをする場合は、「対向車の有無」「前方の状況(追越そうとする車が進路を変える可能性はあるか、など)」をしっかり確認してください。
また、自分が追越される場合は、急な加速などをせず、追越しをする車が安全に追越しできるように注意を払いましょう。