集中豪雨による冠水道路の危険性&走行時の注意点

2023年5月時点の内容です。

日本における自然災害で近年増加しているのが風水害による被害です。以前は、水害というと河川の増水による氾濫(はんらん)を想像することが多かったと思いますが、ここ数年は整備された都市部でも豪雨などによる道路の冠水が多く発生しています。

冠水道路の危険性と走行時の注意点を紹介します。

道路が冠水してしまうメカニズム

近年、ヒートアイランド現象(都市部の気温が周辺地域にくらべて異常な高温を示す現象)によるものと考えられる局地的な集中豪雨(ゲリラ豪雨とも呼ばれます)が頻繁に発生しています。
ゲリラ豪雨が起こりやすい都市部では舗装されている面積が多いため、雨水のほとんどが排水溝から下水道、貯水設備へと流入します。しかし、短時間に極端に大量の雨が降り、その処理能力の限界を超えてしまうと下水道から水があふれ出し、道路を洪水のように覆いつくしてしまいます。冠水してしまった道路は、猛烈な風雨による視界不良とともに非常に危険な状態となります。

冠水した道路の危険性

私たちが運転する一般的なクルマはある程度の冠水や浸水に耐えられるように設計されていますが、走行可能とされる水深は、乗用車であればドアの下端(クルマの床面が浸からない程度)までといわれています。
エンジンの内部に水が入ってしまうと、ほとんどの場合は致命的な故障を引きおこしてしまうため、冠水した道路に無理に侵入するのは避けましょう。

冠水した道路の危険性

冠水した道路を通過する際の注意点

それでもやむを得ず冠水した道路を通過しなければならない場合は、車間距離を十分にとりましょう。前車の水しぶきによって前方がまったく見えない危険な状態になったり、突然前のクルマが停止したりする可能性があるからです。
水たまりを抜けたあとはブレーキの効きが悪くなることがあります。効きが悪くなったと感じたのなら、何度かブレーキを作動させてディスクやパッドを乾燥させましょう。

なお、道路が冠水してしまうと、濁流によって路面状況がよくわからなくなってしまいます。それほどの深さではないように見えても、実際はかなりの量の水がたまっている場合があり、水の下には倒木や障害物などが流れこんで危険な状態となっています。また、車線のラインもよく見えなくなるため、排水溝への脱輪、 段差への乗り上げなどの危険もあります。

アンダーパスには絶対に入らない

さらにもっとも危険な区域が、高架下や立体交差点などのアンダーパスです。道路の中でもさらに低くなっているアンダーパスでは、クルマが深みにはまって立ち往生し、さらには水没してしまうといった痛ましい事故も発生しています。
各都道府県では、集中豪雨時に冠水しやすいアンダーパスや区間をまとめた情報を公開しています。普段から雨が降ると水がたまりやすいポイントを確認しておき、豪雨の際はそうした区間の走行を避けるように心がけておきましょう。

アンダーパス

※いつも走行する道に、アンダーパスがあるかどうかを確認しておきましょう。

もしクルマが水没してしまったら〜クルマからの脱出方法〜

クルマが水没

水深がドアの高さまであると水圧によってドアが開かなくなります。冠水した道路に入り、そこでクルマが動かなくなり水没しそうになった場合は、落ちついて窓を開けてそこから脱出してください。

窓ガラスを割る緊急脱出用ハンマーを車内に用意しておくと安心です。シートベルトを切る機能がセットになったハンマーも発売されているようです。最悪の場合、車内に大量の水が浸入すれば、車外との水圧差がなくなってドアを開けられるようになることも覚えておきましょう。


突発的な集中豪雨はなかなか予測が難しい一面もあり、気象庁によると、1時間あたりの降水量が50ミリ以上となる大雨の回数は、年々増加の傾向をたどっています。
また、1時間に100ミリ以上という旧来の認識では想像を大きく超える豪雨も頻繁に発生しています。もし、運転中に危険なレベルの冠水状態だと感じた場合は、無理をせずに道路脇の駐車場などへ避難して、天候の回復を待つようにしましょう。