乗り物酔い(クルマ酔い/車酔い)のメカニズムと対処法

2023年5月時点の内容です。

楽しいはずのドライブなのに、クルマに酔ってしまうのではないかと不安を感じる方や、実際にいつも気分が悪くなってしまう方もいます。 乗り物酔いのメカニズムとその対処法について紹介します。

乗り物酔いが起こるメカニズム

クルマに限らず、電車や飛行機、船などに乗ることで気分が悪くなる乗り物酔いはとてもつらいものです。乗り物酔いは次のようなメカニズムで発生します。

人間の耳の奥(内耳)には、回転加速度を感知する部位(三半規管)と直線的な運動を感じる部位があります。私たちが身体の平衡感覚をとるときは、この両者を合わせた「前庭器(ぜんていき)」と呼ばれる器官と目から入る視覚情報などを、脳で統合してバランスをとっています。

乗り物酔い

しかし、乗り物に乗っているときは、見ている景色と自分の身体のどちらも揺れている状態です。そのため前庭器が揺れを予測して修正している情報と、目から実際に入ってくる視覚情報などにズレが生じます。これが乗り物酔いの原因といわれています。

クルマを運転しているドライバーが乗り物酔いしてしまう、という話はほとんど聞きません。これは進行方向や車体の揺れ、加減速のタイミングなどを事前に察知できるため、無意識に身体のバランスをとって視覚情報とのズレを起こさないようにしているからなのです。

また、一般的には横揺れよりも縦揺れ、そして大人よりも子どものほうが酔いやすいといわれています。

乗り物酔いの症状と応急処置

乗り物酔いは医学的には「動揺病」と呼ばれ、その症状はいわゆる「めまい」と同じものです。

乗り物酔いの症状

  • 目がクラクラして生あくびが出る
  • 次第に動悸や頭痛、冷や汗、身体のしびれといった症状がでる
  • さらに悪化した場合、強烈な吐き気を催し、実際に嘔吐してしまうこともある
  • 嘔吐が続くと脱水症状に陥って、危険な容態になってしまうこともある

同乗者に乗り物酔いの症状が出たときは、早めに安全な場所にクルマを止めて以下の処置をとりましょう。

  • 風通しのよいところで衣類をゆるめ、なるべく頭を動かさないように楽な姿勢をとらせて安静にする
  • 酔止め薬は、酔ってから服用しても症状を軽減してくれます
  • 嘔吐した場合は、回復を見ながら少しずつスポーツドリンクなどで水分をとる

なお、乗り物酔いしやすい同乗者がいることがあらかじめわかっているような場合には、ドライブ前に嘔吐に備えて使い捨てのビニール袋などを準備しておきましょう。また、子どもたちといっしょのドライブでは、酔止めの薬を準備しておくと安心です。

乗り物酔いを未然に防ぐには

乗り物酔いは気分が悪くなってしまう当事者だけの問題ではありません。乗り物酔いの発症にはさまざまな要因があり、ドライバーが気を遣ってあげることで防げる場合も多いのです。

まずは、ドライブ前にできる対策です。

睡眠不足・疲労、満腹・空腹状態を避ける

クルマに酔いやすいタイプの人は、睡眠不足や身体疲労の蓄積した状態でクルマに乗ると、さらに酔いやすくなってしまいます。とくに子どもたちはドライブ前のワクワク感で興奮して、前夜になかなか寝つけず、睡眠不足になってしまうことがあります。ドライブの日程が決まったら、数日前から体調管理を始めましょう。出発前に食べ過ぎてしまう、また逆に、酔って嘔吐するのが嫌で何も食べない、といった状態でクルマに乗ることもよくありません。

酔止めの薬を飲む

酔止めの薬

クルマに酔いやすいタイプの人は、事前に市販の酔止め薬を服用しておきましょう。酔止め薬には、前庭器の機能を抑える抗ヒスタミンという成分が配合されています。また、クルマ酔いには心理的要因も影響しているため、「薬を飲んだから大丈夫」と自己暗示をかける効果もあります。子どもたちや薬の副作用などが気になる人には、偽薬としてお菓子の粒を飲ませたり、飴をなめさせたりする暗示効果(プラシーボ効果)を利用する方法もあります。

車内の清掃をしっかりと

クルマ独特の臭いやエアコンのカビ臭さ、タバコの臭いなどはクルマ酔いを誘発します。ドライブの前にはしっかりと車内を清掃して、消臭剤などで嫌な臭いを消しておきましょう。なお、ドライバー好みの芳香剤の香りを同乗者も好むとは限りません。強すぎる芳香剤はかえって逆効果となるので気をつけましょう。

タイヤの空気圧を適正にしておく

タイヤの空気圧は乗り心地に大きく影響します。出発前には空気圧をチェックして、適正に調節しておきましょう。また、ガソリンの臭いを避けるため、できればドライブの前日にはタイヤの空気圧調整とあわせて、給油も済ませておきたいものです。

厚着や身体を締めつける服装は避ける

クルマに乗っているときは、きつすぎる衣服が負担になります。ベルトやネクタイ、着物や身体を締めつける下着などは避けましょう。これはドライバーにも同じことがいえますが、ドライバー自身だけでなく同乗者にも、上着や帽子を脱ぐように伝えるなどの気遣いを忘れないようにしたいものです。また、運転中は頻繁に窓を開けて、新鮮な空気を車内に取込むように心がけてあげるといいでしょう。

次に、ドライブ中の対策です。

進行方向を向き、身体をできるだけ安定させる

車内でスマホをいじったり、本を読んだり携帯ゲームを続けたりすると、揺れに身体が対応できなくなり酔ってしまいます。できるだけ前方の風景を見るようにすることで、クルマの動きや揺れに対処できるようになります。また、クルマは車体の中心に近いところがもっとも揺れが少なくなります。酔いを防ぐためには、一般の乗用車なら助手席、3列シートのワゴンタイプ車なら2列目中央の座席に座るようにしましょう。バスでは前から4〜5列目がオススメです。

ドライバーは乱暴な運転を避け、ドライブコースを考える

ドライブコース

乗り物酔いの直接的原因は振動や加減速にあり、ドライバーの運転方法は乗り物酔いに大きく影響します。乱暴な運転は避け、スムーズな安全運転を心がけましょう。また、カーブの連続や急激なアップダウン、渋滞中の頻繁なストップ&ゴーなども乗り物酔いを引起こす要因となります。ドライブコースはこのような要素も考えて決めたいものです。

車内をリラックスした環境に

乗り物酔いには心理的な要因も大きく影響します。ドライバーや乗り物酔いしない周囲の人が協力して、リラックスできる雰囲気を作ってあげることも重要です。ドライバーのイライラや、酔ってしまった同乗者を責めるような言動はもちろん厳禁です。音楽に合わせてみんなで歌ったり、おしゃべりしたりしているうちに目的地に着けるような、楽しいドライブにしましょう。


ドライバーは疲れていなくても、同乗者の様子を見ながら早めに休憩をとるようにしましょう。同乗者の体調にも注意しなければならないドライバーは大変ですが、日ごろの体調管理や周囲への気遣いはドライブに限ったことではありませんよね。いつものように自然な対処ができれば、無理なく思い出いっぱいの楽しいドライブが満喫できるのではないでしょうか。