2016年04月13日|編集:福田
「お酒に強い・弱い」という表現がありますが、これは遺伝によるようです。お酒の席では、「弱い」方は決して無理せず、「強い」方も周囲への配慮を忘れずに、みんなで楽しめるひとときにしたいものです。
しかし、楽しいひとときはいつにも増してお酒がおいしく感じるもの。うっかり飲みすぎて翌日の二日酔いに悩まされた経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
今回は、この「二日酔い」について解説します。
アルコールは大脳の理性的な働きを抑制します。
そのため、お酒を飲むとリラックスしておしゃべりになったり、気が大きくなったり…このくらいの心地よいほろ酔い気分のとき、アルコールの血中濃度は0.1%程度以下です。
ここで止めておけば良いのですが、飲み続けてアルコールの血中濃度がさらに上昇すると何度も同じことを言ったり、理性とは程遠い行動をとってみたり、千鳥足になったり・・・挙句の果てに、翌日は二日酔い。
身に覚えがあるという方も少なくないのでは?
アルコールは肝臓で、まずアセトアルデヒドに、その後酢酸に分解されて全身に送られ、最後は二酸化炭素と水になって体外へ排出されます。
肝臓で分解しきれないアルコールやアセトアルデヒドは、そのまま血液中に取込まれて体内を巡ることになりますが、それらが二日酔いの典型的な症状である吐き気や頭痛を引起こす原因となります。
アルコールの処理能力は体格や年齢などで異なりますが、例えば体重60キロの人が1時間で分解できるアルコールの量は、ビール(大びん)1/3本・日本酒0.3合・ウイスキーダブル1/3杯です。
つまり、ビール1本・日本酒1合・ウイスキーダブル1杯のお酒は、体内でアルコールを分解するのに、それぞれ3時間ずつかかることになります。
逆算すると、朝7時に起きる人はビール2本なら夜12時くらいに飲み終われば大丈夫というわけです。それ以上飲むのなら飲み終わる時間を早くするしかありません。
アルコールを分解するためには多量の水分が必要です。お酒を飲んだときにのどが渇くのはそのためです。二日酔いのときはなおのこと、アルコールの分解を滞らせないために、水分を十分にとりましょう。
二日酔いにつきものの体のだるさとぼんやりした感じは低血糖によるものです。肝臓にはエネルギー源である糖を作る働きがありますが、処理能力以上のアルコールが入ってくると分解で手一杯になり、糖を作る働きが抑制されるために低血糖に近い状態になってしまいます。
このような場合は、果物のジュースや胃にもたれない和菓子で糖分を補給すると少しは楽になるはずです。昔からお酒の後に良いといわれている「柿」はアルコールの処理を助けるカタラーゼという酵素が入っており、また果糖も含んでいます。
なかには、二日酔いは迎え酒で乗越える! という方もいるようですが、カラダには相当な負担をかけていることになります。迎え酒は一時的に血糖値があがりすっきりした気分になりますが、単に分解すべきアルコール量が増えただけのことですから、止めておいたほうが無難です。
熱いシャワーは血行を良くし、体内でのアルコールの分解を活発にします。サウナで汗をかいてすっきりする方もいますが、心臓への負担がかかりやすいのでご注意ください。どちらの場合も、十分な水分補給を忘れずに。
二日酔いは要するに飲みすぎているだけなので、予防は本人の気持ち次第・・・といったところですが、お酒を飲むときのちょっとした工夫で二日酔いの症状を軽減できる場合もあります。
酒の肴(さかな)には、豆腐や納豆・煮豆・枝豆など、胃に負担のかかりにくい良質のたんぱく質がおすすめです。これらの良質のたんぱく質は、肝臓での酵素の働きをサポートし、アルコールを分解しやすくします。
また、ストレートウイスキーなど、強いお酒を飲むときにチェイサーとしてお水を飲むことは、肝臓への負担を軽減するとともに、飲みすぎも防いでくれます。
タバコは胃の動きを悪くします。どうしてもタバコが手放せないという愛煙家は、なるべく控えめに・・・ 。
お酒に強いか弱いかは、アルコールが体内でアセトアルデヒドに分解されたときに、それを低濃度のうちから酢酸に分解する役割をもった酵素の働きによって決定されます。
酵素の働きが弱い人が「お酒に弱い人」で、日本人の約44%(東京国税局調べ)が該当するといわれています。また、酵素が働かないために「まったく飲めない人」も日本人には約4%いるといわれています。これらのお酒に弱い、あるいはまったく飲めない体質は遺伝的にモンゴロイドだけにあり、特に日本人・中国南部の人に多いそうです。
本来はお酒には慎み深くなければいけない体質の民族なのですね。
<酵素の働きが弱い人の割合>
(東京国税局酒税課調べ。国税庁のウェブサイトより)
● 日本人・・・44%
● タイ人・・・10%
● ヨーロッパ系白人・・・0%
● 北アメリカインディアン・・・0~4%
● 中国人・・・41%
● フィリピン人・・・13%
● アフリカ系黒人・・・0%
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監修:保健師 野瀬里美
<参考資料>
「東京国税局」あなたはお酒が強い人?弱い人?