2016年10月27日|編集:福田
最近、胸や手首に心拍計を巻いてジョギングしている人をよく見かけませんか?
一昔前は心拍トレーニングというと専門の心拍計を体に装着し、その横ではドクターがパソコンで数字を解析する、まさにプロアスリート御用達といった大仰なイメージがありました。
しかし今では技術も進歩して、自分の正確な心拍数を、リアルタイムで簡単に知ることができるようになりました。今回は、心拍数と健康の関係や、最適な運動強度について見ていきましょう。
一般的に、心拍数の正常値は生まれてすぐの赤ちゃんのうちは1分間に120回程度と多く、成人は60~100回といわれていますが、体質により多い・少ないがあるため、平常の心拍数だけで自分の病気を判断することはできません。
しかし、いつもの心拍数と異なる状態が続いたりすると、それが不整脈や脳梗塞、あるいは更年期障害などのサインであることもあります。
心拍数は適正な運動強度を知る目安にもなります。同じ負荷の運動をしても、普段から運動している方、運動不足の方、メタボ気味の方など人によって強度は異なります。心拍数は自分にとって一番適した強度の運動を知る絶好の物差しなのです。
目標として「毎日1万歩、歩くと決めたら必ずやりとげる!」「あの丘の頂上まで頑張って登る」など、一定の運動量を決める方法は正しいようにも思えますが、実はこれ、危険なのです。
人間の体調はいつも一定ではありません。湿度や気温にも影響を受けます。自分でも気づかない間に、身体が悲鳴をあげていることもあります。どれだけ運動するべきかを決めるのは、距離や時間ではなく、その日のあなたの身体の調子であり、それを知るヒントが心拍数です。
それでは、脂肪を燃焼させてメタボ解消を目指す方の理想的な心拍数を出してみましょう。まずは何もせず、リラックスした状態の安静時心拍数を測ります。これが「75」だったとします。次に、最大心拍数を出します。これは一般的には「220-年齢」で求めることができるといわれています。つまり50才なら220-50の「170」が耐えられる運動強度の限界です。もちろんこれは必ず正しいというわけではないので、あくまでも目安と捉えてください。
脂肪燃焼に一番適した強度の運動は最大運動強度の60~70%であり、脂肪燃焼に最適な心拍数を出す計算方法は以下のとおりです。
〔最大心拍数(220-年齢)-最小心拍数(リラックスした状態の安静時心拍数)〕×目的の運動強度+最小心拍数
数字をあてはめてみると、50才で最小心拍数が75の方は、「(170-75)×0.6+75=132」となり、1分間に132回の心拍がある程度の運動が、脂肪燃焼に最も適した強度ということになります。
運動中に自分の心拍数がどのくらいなのかを知るのに、特別なウェアラブル端末やアプリを導入する必要はありません。
実は、心拍トレーニングはずっと昔から行われてきたトレーニングで、手首の関節のあたりに指をおいて測ることにより、自分の心拍数を確認することができます。
15秒で何回脈打ったかを数え、それを4倍すれば1分あたりの心拍数が分かります。
手首でよくわからない場合は、首の太い頸動脈に人差し指と中指2本を当てるとわかりやすいかもしれません。
自分の能力が向上しているのが数字になって見えるのは、何よりも励みになります。
例えば、最初は6kmを歩くのに心拍数が140を超えて苦しかったという人が、ウォーキングを続けている間に130以下でクリアできるようになったら、体力がついたことを実感するのではないでしょうか。
数字だけが目標になってしまうのは本末転倒ですが、やはり頑張りが目に見えるかたちで報われると嬉しいものです。
心拍数は最適な運動強度を教えてくれる物差しです。健康のために運動をしているのに、他人と比べて「自分の年齢ならもっと頑張れるはずだ」とプレッシャーを感じたり、「一度決めたことはとことんやり抜こう」と、許容量を超えた強い運動をし過ぎたりすると身体を壊してしまいます。
健康の秘訣は、自分の体と向き合い、体の声に素直に耳を傾けることです。心拍トレーニングはその一助になるので、ぜひ取入れてみてください。
家庭用の血圧計をお持ちの方は、血圧と同時に心拍数も気にかけ、気になる変化があったときは一度、循環器専門医の診察を受けましょう。
このコーナーでは、健康に関する一般的な情報をご紹介しております。個別の症状や検査結果等につきましてはご投稿いただいても、弊社から回答をさしあげることはできません。あしからずご了承ください。
<参考資料>
住商連合健康保険組合 ウォーキングの速度と心拍数
いしゃまち 脈拍の簡単な測り方
日経トレンディネット 実践!心拍トレーニング
執筆:健康スポーツライター 剱木久美子/studio woofoo